葦簀(よしず)

 そろそろ暑い夏がやってきます。ちらほらと軒先によしずを立て掛ける家々が見られる季節になりました。直射日光を遮り涼風を通すよしず、すだれそして緑のカーテン。これら夏の風物が室温を2°C~3°C下げるとなると、それはもう省エネ対策の大きな一助となるわけです。そして若干古めかしい感じはあるものの、「夏ですね」という季節感と自然のものが持つ落ち着いた雰囲気を醸し出してくれるので精神的にも良い感じがします。大いに利用しない手はありません。毎夏、我が塾の省エネにも大きく貢献してくれています。

 さてと、ポテト、今回はこの‘よしず’についてのお話です。漢字では「葦簀」と書きます。葦(あし)で作られた簀(す)。簀は、篠竹や葦などを編んだ筵(むしろ)のこと。葦って、川原でよく見かける、竹を軟弱にしたような、そして群生しているアレですね。「人間は考える葦である」と言ったのはかの有名なパスカルです。「人間は一本の葦のようにひ弱だけれども、考える能力を持っている存在である」と。話を本題に戻しましょう。なぜ葦でできているのに「あしず」ではなく「よしず」なのか。

 皆さんは、「忌み言葉」(いみことば)って聞いたことがありますか。「ひどく嫌って避ける言葉」のことです。不吉なもの、縁起の悪いものは、できれば自分の身から遠ざけたいと思うのが世の常です。例えば、「死」を連想させる数字の「4」が、病室の番号には忌み嫌われて使われないことが多いのもその一つです。葦も「善し悪し」(よしあし)の悪しを連想させてしまいますので、思い切って「よし、‘よし’にしちゃおう」ということだったのでしょうか!?生活の知恵というかユーモアさえも感じますね。もし、よしずを売る人が、「あしずはいらんかねー」と叫んで商売したとしたらどうでしょう。悪いものを売られてしまうようで購買意欲が湧きませんよね。それを「よしず」にかえてしまうだけで、良いものを買って幸運までが転がり込んできそうな気がする、ということになるかもしれません。

 まだいっとき梅雨が続きそうです。よしずの似合う晴れた青空が待ち遠しいですね。ミーン、ミーン、ミーン。

           メーメーこやぎ